入試長文を使った音読練習の手順
一度解いた入試長文を、音読でもう一度使い切るための手順です。1日目は「黙読→意味の確認→お手本→区切りあり音読→区切りを減らす→区切りなしで仕上げ」と進め、数日後に同じ英文を読み直して変化を確かめます。
準備:どの英文を、どのくらい使うか
使う英文
いちばん使いやすいのは、すでに一度解いて、解説も読んだ過去問の長文です。設問を解く段階で内容を考えているので、音読の前の「意味の確認」が短く済みます。逆に、辞書と解説を使っても意味がよくわからない英文は、音読の材料としては難しすぎます。まずは「調べれば全部わかる」くらいのものを選んでください。
分量
入試の長文は500〜1,000語を超えることも多く、全体を何回も音読すると、それだけで1時間近くかかってしまいます。そこで、100〜200語くらいの段落単位に分けて練習するのがおすすめです。1日に1〜2段落でも、毎日続けるほうが、週末にまとめて全文を読むより続けやすいと思います。
用意するもの
- 英文(紙に印刷したもの、またはアプリに取り込んだもの)
- 辞書と、問題集の解説・全文訳
- 時間を計るもの(スマートフォンのストップウォッチなど)
- メモ用の紙
過去問のPDFからアプリ用の英文を作る方法は「過去問PDFを音読教材にする方法」にまとめました。
1日目の手順
ここからは、アプリの練習手順と同じ順番で説明します。回数はあくまで目安で、研究で決まった最適な回数ではありません。反復読みの研究では、1回の練習で同じ文章を読む回数は4回程度までが目安とされているので(Therrien & Kubina, 2006)、何十回も読むより、1回ごとに目的をはっきりさせることを大事にしています。
下の手順の回数を足すと8回になりますが、すべてが同じ読み方の繰り返しではありません。手順1の黙読(1回)と手順3のお手本を聞きながら目で追う読み(2回)は声に出さない読みで、手順5の大きな区切りだけの音読も、表示を変えてまとまりを確かめるための読みです。1回の練習で声に出して通読するのは手順4・5・6の計5回で、上の目安(4回程度まで)に近い4回前後に収めています。疲れて集中が切れるようなら、手順6を1回にして4回に減らしても構いません。
手順1:初見で黙読し、内容を確かめる(1回)
区切りのない状態で1回黙読し、かかった時間を記録します。読み終えたら、段落ごとの要点を日本語で一言メモします。「筆者は〜に反対」「例として〜が挙がる」くらいの短さで十分です。これが今日の出発点になります。すでに解いた問題でも、この1回は「今の自分がどれくらい読めるか」を確かめるためにやっておくと、あとで比べられます。
手順2:意味を確定させる
わからない語や、構造がつかめない文を、辞書や解説で解決します。全文訳と照らし合わせて、自分の理解とずれているところを確認してください。
ここで大事なのは、訳を見るのはこの段階までにすることです。音読しながら訳を見ていると、英語を読んでいるつもりで実は日本語を追っている、ということが起こりがちです。アプリでも、訳や語の意味の表示はこの段階で使い、音読に入る前に「なし」に戻す流れにしています。意味が取れないまま声に出すと、文字を音に変えるだけの作業になってしまうので、この手順は省かないでください。
手順3:お手本を聞きながら目で追う(2回)
お手本の音声を聞きながら、区切りごとに英文を目で追います。問題集に付属の音声があればそれを使い、なければアプリの読み上げ(端末の合成音声)を使います。合成音声は発音の細部までは信頼できないので、どこで区切り、どこで声を下げるかという文の流れを確かめるのに使ってください。
手順4:区切りあり音読(2回)
スラッシュの入った英文を、1区切りずつ意味を前から順に取りながら声に出します。区切りで短く間をとり、文の終わりで声を下げるのがコツです。
Although the town is small, / it attracts thousands of visitors / every summer / because of its music festival.その町は小さいけれど/何千人もの観光客を引きつける/毎年夏に/音楽祭があるので
つかえた区切りには鉛筆で印をつけ、その区切りだけを2〜3回読み直してから先へ進みます。最初から全文を読み直す必要はありません。区切りの位置が読みにくければ、自分で付け直して構いません(区切り方の目安は「スラッシュリーディングとは」)。
手順5:大きな区切りだけで音読(1回)
細かい区切りを外し、節の切れ目のような大きな区切りだけを残して読みます。
Although the town is small, / it attracts thousands of visitors every summer because of its music festival.その町は小さいけれど/音楽祭があるので毎年夏に何千人もの観光客を引きつける
目に見える区切りが減っても、頭の中では手順4と同じまとまりで意味を取れているかを意識してください。ここで急につかえるようなら、手順4にもう一度戻って構いません。
手順6:区切りなしで仕上げ(2回)
区切りのない普通の英文を、時間を計りながら読みます。読み終えたら、次の3つを自分で振り返ります。
- 意味:読みながら内容が頭に入っていたか
- 正確さ:読み間違い・読み飛ばし・言い直しが多くなかったか
- まとまり:意味の切れ目で間がとれ、文末で声が下がっていたか
最後に、本文を見ずに要旨を日本語で1〜2文書きます。手順1のメモと比べて、内容がより正確に言えていれば、今日の練習で理解が深まったと考えられます。時間は記録しますが、速さだけを成績にしないことが大切です(理由は「音読の自己チェック」で書いています)。
数日後の復習
2〜4日ほどあけてから、同じ英文を区切りなしで読み直し、1日目の記録と比べます。このとき、意味がすぐに浮かんでこない文があれば、そこだけ区切りありの表示に戻して確認します。
もう一つ大事なのが、ときどき初見の英文も黙読してみることです。反復読みの研究では、効果は練習した文章で大きく、初めて読む文章への広がり(転移)は小さめという結果が多く報告されています(Therrien, 2004)。同じ英文が速く読めるようになったことと、入試本番の初見の英文が読めるようになったことは別なので、両方を見ておくと自分の状態を正しくつかめます。
1週間の組み立て例
あくまで一例ですが、たとえば次のように回せます。新しい英文と復習を交互に入れると、毎日が同じ作業にならずに続けやすくなります。
| 曜日 | 内容 |
|---|---|
| 月 | 英文A(段落1〜2)を手順1〜6 |
| 火 | 英文A(段落3〜4)を手順1〜6 |
| 水 | 英文Aの段落1〜2を数日後の復習として区切りなしで |
| 木 | 英文B(段落1〜2)を手順1〜6 |
| 金 | 英文Aの段落3〜4を復習/初見の英文を1つ黙読 |
| 土 | 英文B(段落3〜4)を手順1〜6 |
| 日 | 休み、または英文Bの段落1〜2を復習 |
時間がない日の短縮版
模試の前や課題が多い日は、全部の手順をこなすのは難しいと思います。そんな日は、手順2(意味の確認)を済ませた段落について、区切りあり音読1回と区切りなし1回だけでも構いません。10分ほどで終わります。省いてはいけないのは「意味を確定させる」ことで、意味がわからないまま回数だけこなすのは、短縮版でも避けてください。
うまくいかないとき
何度読んでも同じ所でつかえる
つかえる原因が「発音がわからない語」なのか「文の構造がつかめていない」のかを分けて考えます。前者ならお手本でその語だけ確認し、後者なら手順2に戻って構造を確認します。
声に出すと意味が頭に入らない
読むことに集中すると内容が抜けるのは、最初はよくあることです。区切りを細かめにして、1区切りごとに「今どんな意味か」を意識しながらゆっくり読んでみてください。速さはあとからついてくることが多いです。
同じ英文に飽きてしまう
手順のすべてを同じ日にやる必要はありません。手順1〜4を今日、5〜6を明日、と分けても大丈夫です。
まとめ
- 英文は解説まで読んだ過去問を使い、100〜200語の段落単位で練習する。
- 1日目は、黙読→意味の確定→お手本→区切りあり音読→大きな区切りだけ→区切りなしで仕上げ。声に出して通読するのは4回前後(多くても5回)が目安。
- 訳を見るのは意味を確定させる段階まで。音読中は英語だけを見る。
- 数日後に同じ英文を読み直し、ときどき初見の英文でも確かめる。
この手順はReadflow のアプリで、表示の切り替えや計測・記録をしながら進められます。手順の根拠になった研究は「音読・反復読みの効果は本当?研究からわかること」で紹介しています。
参考:Therrien, W. J. (2004). Remedial and Special Education, 25(4), 252–261. / Therrien, W. J., & Kubina, R. M. (2006). Intervention in School and Clinic, 41(3), 156–160. 詳しい文献情報は研究紹介の記事の参考文献にあります。