音読・反復読みの効果は本当?研究からわかること
同じ文章をくり返し読む練習には、流暢さと理解を伸ばすという研究結果があります。ただし、対象の多くは英語を母語とする子どもで、効果も「練習した文章」で大きく出やすいなど、限界もはっきりしています。アプリを作るときに読んだ研究を、わかっていることと、わかっていないことに分けて紹介します。
研究を読むときの3つの注意
「音読は効果がある」という言葉はよく聞きますが、研究の中身を見ると、条件によって結果がかなり違います。この記事では、それぞれの研究について次の3点をできるだけ書くようにしました。
- 誰が対象か:英語を母語とする小学生なのか、日本人の大学生なのか。日本の高校生が入試長文を読む状況とどれくらい近いか。
- 何で効果を測ったか:練習したその文章で速く読めるようになったのか、初めて読む文章でも伸びたのか(後者を「転移」と呼びます)。
- 規模とデザイン:参加者が何人で、比べる群があったか。数十人規模の研究は、結果が偶然に左右されやすくなります。
入試で必要なのは初見の英文を読む力なので、特に2つ目の「転移」は大事なポイントです。
反復読みの効果:母語話者の子どもの研究
18研究のメタ分析(Therrien, 2004)
反復読み(repeated reading)の研究で最もよく引用されるものの一つが、Therrien(2004)のメタ分析です。英語を母語とする5〜18歳の児童・生徒(学習障害のある子を含む)を対象にした18の研究をまとめ、平均の効果量は流暢さで .75、理解で .73 と報告されています。教育研究では中程度から大きめの効果といえる値です。
ただし、この効果の多くは練習した文章そのもので測ったものです。初めて読む文章への転移も見られたものの、効果はそれより小さいとされています。つまり「同じ文章を何度も読めば、その文章はうまく読めるようになる」のは確かでも、「別の文章も読めるようになる」効果は控えめに見ておくほうが正確です。
効果を高める条件(Therrien & Kubina, 2006)
Therrien と Kubina(2006)は、反復読みを効果的にする要素として、お手本の読みを聞くこと、読み方へのフィードバック、目標(基準)を決めて読むことを挙げています。また、1回の練習で同じ文章を読む回数は、4回程度までが目安とされています。何十回も読むより、条件を整えた数回のほうがよい、という考え方です。
補助のある読み(Kuhn & Stahl, 2003)
流暢さの指導についての研究をまとめた Kuhn と Stahl(2003)は、お手本や手助けのある「補助つきの読み」が補助なしの読みより効果的な傾向を示しました。一方で、繰り返すこと自体よりも、手助けやフィードバックを受けながら読む量が大事なのではないか、という見方も示しています。この研究も、対象は主に英語を母語とする子どもです。
外国語として英語を学ぶ人の研究
日本の高校生にとってより参考になるのは、英語を外国語として学ぶ人(EFL学習者)の研究です。ただ、数はまだ多くなく、規模も小さめです。
日本の大学生のチャンク模倣音読(Shimono, 2018)
日本の大学生55名を3つの群に分け、1学期間にわたって練習を行った研究です。時間を計った黙読のあと、3〜5語ごとにスラッシュの入った文章で、チャンク単位にお手本をまねて音読し、ペアでも音読するという手順でした。その結果、理解を保ったまま(理解度はおよそ70%前後)読む速さが伸び、英語の会話練習をした比較群を上回りました。ただし、「時間を計って読む練習だけをした群」との間には、はっきりした差はありませんでした。準実験(無作為に群を分けていない)である点も含め、「音読だけが特別に効く」とまではいえない結果です。
初見の文章への伸び(Chang & Millett, 2013)
英語学習者が同じ文章を時間を計りながら繰り返し読んだ研究では、練習していない文章でも読む速さが伸びたと報告されています(13名ずつの小規模研究)。転移が起こりうることを示す結果として興味深い一方、これだけで確かな結論は出せません。
区切り(チャンク)に関する研究
意味を無視した区切りは逆効果(Yamashita & Ichikawa, 2010)
日本の大学生48名を対象にした実験で、意味のまとまりを無視して区切った文章は、中級の読み手の理解と読みの滑らかさを下げたと報告されています(ただし、意味で区切った場合に理解が上がる効果ははっきりしませんでした。また、この研究はスラッシュではなく、画面に区切りごとに表示する方式で調べています)。次の2つを比べるとイメージしやすいと思います。
The new rule / was introduced / to reduce waste / in school cafeterias.新しい規則は/導入された/ごみを減らすために/学校の食堂で
The new rule was / introduced to reduce / waste in school / cafeterias.(意味を無視した区切り)「was」と「introduced」、「school」と「cafeterias」が切り離されている
区切りがあれば何でもよいわけではなく、句や節の切れ目に置くことが前提になる、というのがこの研究から読み取れることです。1回の実験なので、長期の練習効果を調べたものではありません。
高校生へのチャンク訓練(Kosaka, 2023)
日本の高校2年生56名(訓練群31名・対照群25名)を対象に、4週間、チャンクごとに区切った英文を読む訓練を行った研究です。対照群は区切りのない形式の英文で練習しました。訓練群では統語的な処理などに伸びが見られましたが、2つの群の差は統計的に有意ではありませんでした。日本の高校生を対象にした貴重な研究ですが、期間が短く人数も少ないため、「効果がない」とも「効果がある」とも言い切れない結果です。
速さよりも「まとまり」と正確さ
音読の練習というと、読む速さ(1分あたりの語数)を記録して伸ばすことを目標にしがちです。しかし、速さだけを追うことには注意が必要だという研究もあります。
- Paige ほか(2017):小学1〜3年生250名のデータで、読解の成績を説明したのは単語を正確に読めることと、プロソディ(まとまりや抑揚のある読み方)でした。読む速さは有意な予測因子ではありませんでした。母語話者の低学年の子どもが対象です。
- Jiang(2016):成人の英語学習者149名の研究で、日本語を母語とするグループでは、プロソディが読解を予測していました。相関を調べた研究で、因果関係(プロソディを練習すれば読解が伸びる)までは示していません。また、日本語母語の下位グループは人数が限られます。
- Rasinski(2012):流暢さの指導が「速く読む競争」になってしまい、意味や表現が置き去りにされている現状を批判しています。
まとまりを意識した読み方とは、たとえば次の文で、区切りの位置で短く間をとり、文末で声を下げるような読み方です。
If you water the plant too often, / its roots may start to rot.その植物に水をやりすぎると/根が腐り始めることがある
カンマの前後で一度区切り、「条件」と「結果」を分けて声にできていれば、意味のまとまりをとらえて読めているサインと考えられます。自己チェックの観点については「音読の自己チェック」で詳しく書いています。
まだわかっていないこと
- 区切りを少しずつ外していく方法:スラッシュ入りの文章から段階的に区切りを外し、普通の英文に移行できるかを直接調べた研究は、探した範囲では見つかりませんでした。
- 日本の高校生を対象にした統制実験:入試レベルの長文を使い、無作為に群を分けて長期間比べた研究はほとんど見当たりません。
- 最適な反復回数:「4回程度まで」という目安はありますが、外国語学習者にとっての最適な回数ははっきりしていません。
- シャドーイングなどを加えた場合の上乗せ効果:結論は出ていません。
研究をどう練習手順に落とし込んだか
アプリの練習手順は、上の研究をもとにした設計上の判断で、研究がそのままの手順を検証したわけではありません。対応関係は次のとおりです。
| 手順 | 根拠にした考え方 |
|---|---|
| 初見で黙読 → 意味を確定 | 意味が取れないまま読んでも文字を音にするだけになりやすい。区切りは意味のまとまりに置く(Yamashita & Ichikawa, 2010) |
| お手本を聞きながら目で追う | お手本つき・補助つきの読み(Therrien & Kubina, 2006; Kuhn & Stahl, 2003) |
| 区切りあり音読×2 → 大きな区切りだけ → 区切りなし | チャンク単位の模倣音読(Shimono, 2018)。1回の練習で読む回数は4回前後まで(Therrien & Kubina, 2006)。区切りの外し方は仮説的 |
| 仕上げの計測と自己評価 | 速さだけでなく意味・正確さ・まとまりを見る(Paige ほか, 2017; Rasinski, 2012) |
| 数日後にもう一度・ときどき初見の英文 | 転移は小さいことが多いので、新しい文章でも確かめる(Therrien, 2004) |
まとめ
- 反復読みには流暢さと理解を伸ばすという研究があるが、対象の多くは英語母語の子どもで、効果は練習した文章で大きい。
- お手本・フィードバック・目標があると効果的とされ、1回の練習で同じ文章を読む回数は4回程度までという目安がある。
- 日本人学習者の研究は小規模なものが多く、区切りは意味のまとまりに置くことが前提。
- 速さだけでなく、正確さとまとまりを見ることが理解とつながっている可能性がある。
「効果がある」と言い切るより、「こういう条件ならこういう結果が出た」という形で受け取るのが、研究との上手なつきあい方だと思います。手順はアプリでそのまま試せます。具体的な進め方は「入試長文を使った音読練習の手順」をどうぞ。
参考文献
- Chang, A. C.-S., & Millett, S. (2013). Improving reading rates and comprehension through timed repeated reading. Reading in a Foreign Language, 25(2), 126–148. 掲載ページ
- Jiang, X. (2016). The role of oral reading fluency in ESL reading comprehension among learners of different first language backgrounds. The Reading Matrix, 16(2), 227–242. PDF
- Kosaka, T. (2023). The effects of chunk reading training on the syntactic processing skills and reading spans of Japanese learners of English. Reading in a Foreign Language, 35(2), 270–292. ERIC(PDF)
- Kuhn, M. R., & Stahl, S. A. (2003). Fluency: A review of developmental and remedial practices. Journal of Educational Psychology, 95(1), 3–21. 掲載ページ
- Paige, D. D., et al. (2017). Is prosodic reading a strategy for comprehension? Journal for Educational Research Online. 掲載ページ
- Rasinski, T. (2012). Why reading fluency should be hot! The Reading Teacher, 65(8), 516–522. PDF
- Shimono, T. (2018). L2 reading fluency progression using timed reading and repeated oral reading. Reading in a Foreign Language, 30(1), 152–179. ERIC(PDF)
- Therrien, W. J. (2004). Fluency and comprehension gains as a result of repeated reading: A meta-analysis. Remedial and Special Education, 25(4), 252–261. 要旨(ASHA Evidence Maps)
- Therrien, W. J., & Kubina, R. M. (2006). Developing reading fluency with repeated reading. Intervention in School and Clinic, 41(3), 156–160. PDF
- Yamashita, J., & Ichikawa, S. (2010). Examining reading fluency in a foreign language: Effects of text segmentation on L2 readers. Reading in a Foreign Language, 22(2), 263–283. ERIC(PDF)