音読の自己チェック:意味・正確さ・まとまり
一人で音読していると、「何秒で読めたか」だけが目に見える成果になりがちです。でも、速く読めても内容が頭に入っていなければ、入試の読解にはつながりません。音読を振り返るときの3つの観点と、速さだけを成績にしない理由をまとめます。
なぜ自己チェックが必要か
反復読みの研究では、お手本を聞くことや、読み方についてフィードバックを受けることが、効果を高める要素として挙げられています(Therrien & Kubina, 2006)。学校の授業なら先生が聞いてくれるかもしれませんが、家で一人で練習するときは、誰も「今のはここで切ったほうがいい」とは言ってくれません。
そこで、自分で自分の読みを聞き、決まった観点で振り返るのが自己チェックです。もちろん、先生や友人に聞いてもらうのと同じ質のフィードバックにはなりません。それでも、観点を決めておけば、「なんとなく読めた気がする」を「ここができて、ここができていない」に変えることができます。
3つの観点
音読の流暢さを評価する方法として、英語圏の学校では「多次元流暢性尺度(MFS)」がよく知られています。表現・区切り・滑らかさ・速さの4つの観点で読みを評価するものです。Readflow ではこれを参考にしながら、入試英語の練習向けに、意味・正確さ・まとまりの3つに独自の言葉で簡略化しました。研究で検証された尺度をそのまま使っているわけではない点にご注意ください。
1. 意味:内容が頭に入っていたか
いちばん大事な観点です。読み終えたら英文から目を離し、要旨を日本語で1〜2文で書いてみてください。「筆者は〜と考えている。その理由は〜」と言えれば、読みながら意味を受け取れていたことになります。何も浮かばない、あるいは最後の段落しか覚えていないなら、声を出すことに精一杯で、意味の処理が追いついていなかったのかもしれません。
練習の最初の黙読で書いたメモと比べると、変化がわかりやすくなります。
2. 正確さ:読み間違い・読み飛ばし・言い直し
単語を別の語に読み間違えた、行や語を飛ばした、言い直した、という箇所の数です。特に注意したいのは、形の似た語の取り違えです。
The room was quite cold, / though the heater was on.部屋はかなり寒かった/暖房はついていたのに
この文で quite(かなり)を quiet(静かな)、though(〜だけれど)を through(〜を通って)と読んでしまうと、意味がまったく変わります。こうした読み間違いは、語の意味をあいまいに覚えているサインでもあるので、印をつけて辞書で確認しておくと、語彙の復習にもなります。
3. まとまり:意味の切れ目で区切れていたか
意味のまとまりで短く間をとり、文の終わりで声を下げられていたか、という観点です。英語の研究では、こうした区切りや抑揚、強弱などをまとめて「プロソディ」と呼びます。
The scientist / who discovered the new species / was only twenty-five years old.その科学者は/新種を発見した/たった25歳だった
この文を読むとき、species のあとで一呼吸置けていれば、長い主語がここで終わり、was から述語が始まることを理解して読めていると考えられます。逆に new と species の間で止まったり、全体を同じ調子で一息に読んだりしているなら、構造をつかめていない可能性があります。自分で聞いて判断しにくいときは、お手本の音声と同じ箇所で間がとれているかを比べてみてください。
速さだけを成績にしない理由
時間を計ると数字が出るので、つい「前回より何秒速くなったか」ばかり気になります。速さの記録自体は役に立ちますが、それだけを成績にしないほうがよいと考える理由がいくつかあります。
速さより、正確さとまとまりが理解とつながっているという研究
英語を母語とする小学1〜3年生250名を対象にした研究(Paige ほか, 2017)では、読解の成績を説明していたのは、単語を正確に読めることと、まとまりや抑揚のある読み方(プロソディ)でした。読む速さは、統計的に有意な予測因子ではありませんでした。また、成人の英語学習者149名を対象にした研究(Jiang, 2016)では、日本語を母語とするグループで、プロソディが読解の成績を予測していました。
ただし、前者は英語を母語とする低学年の子ども、後者は相関を調べた研究で、日本語母語のグループは人数も限られています。「まとまりを練習すれば読解が伸びる」という因果関係まで示されたわけではありません。それでも、「速さだけ見ていれば十分」とは言えないことを示す材料にはなると思います。
速さを追うと、意味が置き去りになりやすい
Rasinski(2012)は、流暢さの指導が「どれだけ速く読めるか」の競争になり、意味や表現が置き去りにされている状況を批判しています。速さを目標にすると、句読点を無視して一息で読んだり、意味を考えずに音だけを流したりする読み方が「好成績」になってしまいます。それは入試で求められる読み方とは逆です。
同じ英文の速さは、慣れでも上がる
同じ英文を何度も読めば、速く読めるようになるのは自然なことです。反復読みの研究でも、効果は練習した文章で大きく、初めて読む文章への広がりは小さめという結果が多く報告されています(Therrien, 2004)。練習した英文のタイムが縮んだことは、初見の英文を速く正確に読めるようになったことと同じではありません。
こうした理由から、Readflow では仕上げの音読で時間を計りつつ、意味・正確さ・まとまりの自己評価をあわせて記録するようにしています。
録音を使って確かめる
読んでいる最中に自分の声を客観的に聞くのは難しいので、スマートフォンのボイスメモなどで録音して聞き返すのがおすすめです。聞き返すときは、英文を見ながら次の順で確認します。
- 止まった・言い直した箇所に印をつける(正確さ)
- 区切りの位置で間がとれているか、文末で声が下がっているかを見る(まとまり)
- お手本の音声と、1〜2文だけ聞き比べる
全文を毎回聞き返す必要はありません。最初と、数日後の復習のときに1回ずつ録音して比べるだけでも、変化がよくわかります。録音した音声は自分の確認用にとどめ、英文の内容を含むものを公開しないようにしてください。
記録のつけ方
ノートでもアプリでも、次のような項目を残しておくと、あとで見返したときに役立ちます。3段階くらいの大まかな評価で十分です。
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 日付・英文 | どの年度・大問のどの段落か |
| 表示の段階 | 区切りあり/大きな区切りだけ/なし |
| 時間 | 読み終えるまでの秒数 |
| 意味 | ◎ 要旨が言えた ○ だいたい △ 言えない |
| 正確さ | 読み間違い・言い直しの数、間違えた語 |
| まとまり | ◎ 自然 ○ ところどころ不自然 △ 単語ごと |
| メモ | つかえた文、次に気をつけること |
時間は他の項目と並べて書くことで、「速くなったけれど意味が△になった」のような変化に気づけます。
評価が低かったときの次の一手
- 意味が取れていない:速さは気にせず、区切りありの表示に戻します。わからない語や構文をもう一度確認してから読み直します。
- 読み間違いが多い:お手本を聞き、つかえた区切りだけを数回読んでから、全体を読み直します。
- まとまりが不自然:区切りあり音読に戻り、区切りで短く間をとり、文末で声を下げることを意識します。
- 3つとも安定している:表示を「大きな区切りだけ」→「なし」と進め、次は初見の英文でも試してみます。
まとめ
- 一人で練習するときは、決まった観点で自分の読みを振り返ることがフィードバックの代わりになる。
- 観点は、意味(要旨が言えるか)・正確さ(読み間違い)・まとまり(区切りと抑揚)の3つ。
- 速さは記録するが、それだけを成績にしない。正確さやまとまりが理解と関係しているという研究がある一方、因果関係まではわかっていない。
- 録音して聞き返し、低い観点に合わせて一つ前の段階に戻る。
計測と3観点の自己評価はアプリの仕上げの手順に組み込んであります。区切りの外し方は「区切りを少しずつ外して普通の英文に戻す練習」、研究の詳しい紹介は「音読・反復読みの効果は本当?研究からわかること」にあります。
参考文献
- Jiang, X. (2016). The role of oral reading fluency in ESL reading comprehension among learners of different first language backgrounds. The Reading Matrix, 16(2), 227–242. PDF
- Paige, D. D., et al. (2017). Is prosodic reading a strategy for comprehension? Journal for Educational Research Online. 掲載ページ
- Rasinski, T. (2012). Why reading fluency should be hot! The Reading Teacher, 65(8), 516–522. PDF
- Therrien, W. J. (2004). Fluency and comprehension gains as a result of repeated reading: A meta-analysis. Remedial and Special Education, 25(4), 252–261. 要旨(ASHA Evidence Maps)
- Therrien, W. J., & Kubina, R. M. (2006). Developing reading fluency with repeated reading. Intervention in School and Clinic, 41(3), 156–160. PDF
- Multidimensional Fluency Scale(MFS)の構成. University of Michigan Dyslexia Help. 掲載ページ