スラッシュリーディングとは:区切る場所のルールと例
英文を意味のまとまりごとに「/」で区切り、前から順に理解していく読み方です。どこで切るかには目安になるルールがありますが、正解は1つではありません。自作の例文で、切る場所・切らない場所・区切りの細かさの選び方を整理します。
スラッシュリーディングで何をしているのか
入試の長文で時間が足りなくなる原因の一つが「返り読み」です。文の最後まで読んでから日本語の語順に並べ替えようとすると、同じ箇所を何度も目で往復することになります。スラッシュリーディングは、英文を意味のまとまり(チャンク)に区切り、そのまとまりを英語の語順のまま前から順に理解していく練習です。
大事なのは「/」を引くことそのものではなく、まとまりごとに意味を受け取り、次のまとまりへ進むという読み方を体に覚えさせることです。スラッシュは補助輪のようなもので、最終的には何も書かれていない普通の英文で同じことができるのが目標です(外し方は「区切りを少しずつ外して普通の英文に戻す練習」で書いています)。
なお、区切る位置は適当でよいわけではありません。日本人大学生を対象にした実験では、意味のまとまりを無視して機械的に切った文章は、中級の読み手の理解を下げたと報告されています(Yamashita & Ichikawa, 2010。48名・1回の実験なので、これだけで一般化はできません)。ただし、意味で区切った場合に理解が上がる効果ははっきりしませんでした。また、この研究はスラッシュではなく、画面に区切りごとに表示する方式で調べています。それでも、意味を無視した区切りは避け、句や節の切れ目を意識して区切ることが大切だといえます。
区切る場所の6つの目安
以下は「ここで切ると意味が取りやすいことが多い」という目安です。すべてで切る必要はなく、短い文なら切らずに読める箇所もたくさんあります。
1. 句読点(カンマ・セミコロン・コロン・ダッシュ)
いちばんわかりやすい目印です。書き手がすでに区切ってくれている場所なので、迷ったらまずここで切ります。ただし、such as A, B, and C のような列挙のカンマは、項目が短ければ切らずにひとまとまりで読んだほうが自然です。
After the rain stopped, / the children ran outside / to look for frogs.雨がやんだあと/子どもたちは外へ走って出た/カエルを探すために
2. 接続詞・従属節の前
because, although, when, if, while, since, that などで始まる節の前は、話の流れが変わる場所です。理由、譲歩、条件などの「論理のつながり」が見えるので、入試の長文読解では特に重要です。that 節は、I think that のように短い前置きなら切らずに読んでも構いません。
Many students stay up late / because they feel / that there is not enough time / during the day.多くの学生が夜ふかしをする/なぜなら感じているからだ/十分な時間がないと/日中には
3. 関係詞の前
who, which, where, whose などの関係詞は、直前の名詞に説明を付け足す合図です。関係詞の前で切って「どんな人/物かというと」と受け取ると、後ろから訳し上げずに済みます。
The library / where my sister works / will close next spring.その図書館は/(どんな図書館かというと)姉が働いている/来年の春に閉館する
4. 前置詞句の前
in, on, at, for, with, during, without などで始まる句は、場所・時・手段などの情報を追加します。ある程度の長さがある前置詞句の前で切ると、主な内容と付け足しの情報を分けて受け取れます。逆に in fact や at home のような短い決まった言い方は、切ると細かくなりすぎます。
5. 長い主語の後(主語と動詞の間)
入試の英文で読みにくさの原因になりやすいのが、修飾語がたくさん付いた長い主語です。主語が終わって動詞が始まる場所で切ると、「何が」と「どうした」の境目がはっきりします。主語が He や The plan のように短いときは、ここで切る必要はありません。
The number of people / who work from home at least once a week / has increased steadily.人々の数は/少なくとも週に1回在宅で働く/着実に増えてきた
6. to不定詞の前
目的(〜するために)や、名詞の説明(〜するための)を表す to不定詞の前も、切ると読みやすい場所です。ただし want to go や try to explain のように動詞と強く結びついている場合は、動詞とまとめて読むほうが自然です。
She saved money for two years / to study abroad in Canada.彼女は2年間お金を貯めた/カナダに留学するために
切らないほうがよい場所
切る場所と同じくらい大切なのが、切らない場所です。次のような語のつながりは、間に「/」を入れると意味のまとまりが壊れてしまいます。
- 冠詞・形容詞と名詞の間(a / small village は×)
- 助動詞と動詞の間(can / solve は×)
- 動詞と短い目的語の間(read / the book は×)
- 句動詞の中(look / after、give / up は×)
- 1〜2語しか残らない区切り(文末の / too や / later など)
次の例は、語数だけで機械的に区切った悪い例と、意味で区切った例を並べたものです。
Scientists have / found that some birds / can recognize human / faces.(悪い例)「人間の/顔」が分かれ、「発見した」の中も切れている
Scientists have found / that some birds can recognize human faces.科学者たちは発見した/一部の鳥が人間の顔を見分けられることを
上の例は3〜4語ずつ同じ長さで並んでいますが、まとまりの中身がちぐはぐです。声に出してみると、「can recognize human」で区切るのがいかに不自然かがわかると思います。迷ったときは、区切りの手前までで「何についての話か」が言えるかどうかを確かめてください。
細かめ・標準・大きめの使い分け
同じ文でも、どのくらい細かく切るかで読みやすさが変わります。Readflow のアプリでは区切りの提案を3段階から選べるようにしていて、おおよそ「細かめ」は2〜5語、「標準」は3〜8語、「大きめ」は5〜13語くらいのまとまりを目安にしています(これはアプリの設計上の目安で、研究で決まった数字ではありません)。
When I was a child, / my grandfather / often told me stories / about the small town / where he grew up.(細かめ)子どものころ/祖父は/よく話をしてくれた/小さな町についての/彼が育った
When I was a child, / my grandfather often told me stories / about the small town where he grew up.(大きめ)子どものころ/祖父はよく話をしてくれた/彼が育った小さな町について
- 細かめ:構文がまだ取りにくい文、初めて読む難しい段落、語彙が多い文に。1つひとつの関係を確認しながら読めます。
- 標準:たいていの練習の出発点。意味は取れるけれど、読むとつかえるという段階に向いています。
- 大きめ:内容がわかっている文を、節単位で流れよく読む段階に。普通の英文に近づける前のステップです。
同じ長文の中でも、難しい文だけ細かく、やさしい文は大きく、と変えて構いません。区切りの細かさは「読み手の今の力」と「その文の難しさ」で決まるものです。
区切りは正解が1つではない
参考書によって区切り方が違って戸惑ったことがあるかもしれません。それは、どちらかが間違っているというより、区切りに唯一の正解がないからです。たとえば次の文は、どちらの区切り方でも意味のまとまりは保たれています。
It is important / to get enough sleep / before an exam.大切だ/十分な睡眠をとることは/試験の前に
It is important to get enough sleep / before an exam.十分な睡眠をとることは大切だ/試験の前に
前者は形式主語 it の構文を意識したい人向け、後者はこの構文に慣れていて一息で読める人向けです。判断の基準は次の2つで十分だと思います。
- 区切りまでで意味を一度受け取れるか(途中で「何の話?」とならないか)
- 声に出したとき自然に間がとれるか(英語として不自然な位置で息継ぎしていないか)
アプリでも、提案された区切りは語と語のすき間をクリックして自由に付け外しできるようにしています。提案はあくまでたたき台なので、自分が読みやすい位置に直してください。
よくあるつまずき
切りすぎて、かえって読みにくくなる
2語ごとに区切ると、まとまりではなく単語を拾う読み方に戻ってしまいます。細かめで読んで意味が取れたら、早めに標準や大きめに移るのがおすすめです。
スラッシュを引く作業に時間をかけすぎる
全文に丁寧に線を引いて満足してしまうと、肝心の「読む」練習の時間が減ります。区切りはさっと付け、気になったところだけ直すくらいでちょうどよいと思います。
区切りごとに日本語を書き込みすぎる
区切りごとの訳は、意味を確認する段階では役立ちます。ただ、音読のときにも訳を見ながら読むと、英語を処理しているのか日本語を読んでいるのかわからなくなりがちです。訳は意味の確認が済んだら隠す、というのが自分なりのルールです。
まとめ
- スラッシュリーディングは、意味のまとまりごとに前から理解する練習。線を引くこと自体が目的ではない。
- 切る目安は、句読点・接続詞や従属節・関係詞・前置詞句・長い主語の後・to不定詞の前。
- 冠詞と名詞、助動詞と動詞、句動詞の中などは切らない。語数だけで機械的に切らない。
- 細かさは文の難しさと自分の段階で選ぶ。区切りに唯一の正解はない。
区切りの提案と付け外しはReadflow のアプリで試せます。区切った英文を使った練習の進め方は「入試長文を使った音読練習の手順」、区切りの外し方は「区切りを少しずつ外して普通の英文に戻す練習」にまとめています。
参考:Yamashita, J., & Ichikawa, S. (2010). Examining reading fluency in a foreign language: Effects of text segmentation on L2 readers. Reading in a Foreign Language, 22(2). ERIC(PDF)