区切りを少しずつ外して普通の英文に戻す練習
入試本番の英文には、スラッシュは入っていません。区切りのある英文で読めるようになったら、区切りを段階的に減らし、最後は何も書かれていない英文を頭の中のまとまりで読めることを目指します。この方法を直接検証した研究は見つかっていないため、仮説にもとづく練習として紹介します。
なぜ区切りを外す練習が必要か
スラッシュの入った英文は、とても読みやすく感じます。どこで意味が切れるかを誰かが先に示してくれているからです。ただ、その読みやすさの一部は、スラッシュという「目に見える手がかり」に支えられています。手がかりがなくなったとき、同じように読めるとは限りません。
入試の英文はもちろん、模試でも参考書でも、普通の英文に区切りは入っていません。区切りあり音読の目的は、区切りのある英文が読めるようになることではなく、区切りがなくても頭の中で同じまとまりを作れるようになることです。そのためには、どこかの段階で手がかりを減らしていく必要があります。
いきなり区切りを全部外すと、急に読みにくくなってつかえたり、まとまりを意識しないで単語ごとに読む癖に戻ったりしやすいです。そこで、少しずつ外すという方法をとります。
この方法の位置づけ
区切りを段階的に外すことで普通の英文の読みへ移行できるかを、直接比べた研究は、探した範囲では見つかりませんでした。ここで紹介する段階の分け方は、関連する研究や考え方をもとにした仮説的な設計です。
参考にしたのは次のような研究です。日本の大学生がスラッシュの入った文章でチャンク単位の模倣音読を続けた研究では、理解を保ったまま読む速さが伸びました(Shimono, 2018。55名。ただし時間を計って読む練習だけの群との差はなし)。また、高校2年生にチャンクごとに区切った英文で訓練した研究では、訓練群に伸びは見られたものの、対照群との差は有意ではありませんでした(Kosaka, 2023。56名・4週間)。どちらも「区切りのある英文で練習すること」を扱っていますが、区切りを外したあとの読みに何が起きるかは、まだはっきりしていません。
手助けを少しずつ減らしていく考え方は、学習の支援一般でよく使われるものです。ただ、それがこの練習でも有効かどうかは、自分の読みの変化を見ながら確かめていくしかありません。その意味で、次の段階に進むときの「目安」と、うまくいかないときに「戻る」ことを大事にしています。
4つの段階
アプリでは表示を「区切りあり → 大きな区切りだけ → 薄く → なし」の4段階で切り替えられるようにしています。同じ文がどう変わるかを見てみます。
段階1:区切りあり
標準的な細かさの区切りがすべて見えている状態です。1区切りずつ意味を取りながら声に出します。
Some researchers argue / that the best way to remember new words / is to use them / in conversation / soon after learning them.一部の研究者は主張している/新しい語を覚える最良の方法は/それを使うことだと/会話の中で/覚えてすぐに
段階2:大きな区切りだけ
節の切れ目など、大きな区切りだけを残します。小さなまとまりは自分の頭の中で作ることになります。
Some researchers argue / that the best way to remember new words is to use them in conversation soon after learning them.一部の研究者は主張している/新しい語を覚える最良の方法は、覚えてすぐ会話の中で使うことだと
ここで「the best way to remember new words」までが主語で、「is」から述語が始まる、という境目を自分で感じ取れているかがポイントです。段階1で何度も読んでいれば、目に見える線がなくても、声の間として自然に出てくることが多いと思います。
段階3:薄く
区切りの記号を薄い色で表示し、「見ようとすれば見えるけれど、普段は目に入らない」状態にします。紙の上でいえば、鉛筆で薄く書いた線のようなものです。迷ったときだけ確認できる、補助輪を少し浮かせた状態だと考えてください。
段階4:なし
区切りのない普通の英文です。段階1で作ったまとまりを、声の間と抑揚だけで再現できていれば成功です。仕上げとして時間を計り、意味・正確さ・まとまりを振り返ります。
次の段階に進む目安
何回読んだら次へ、という決まった回数はありません。回数よりも、読みの中身で判断するのがよいと思います。目安にしているのは次の3つです。
- 意味が前から取れている:読みながら、区切りごとの意味が日本語に並べ替えなくても浮かんでいる。
- つかえが少ない:段落全体で、言い直しや止まる場所が1〜2か所程度に収まっている。
- まとまりで声が出ている:区切りの位置で自然に短い間がとれ、文末で声が下がっている。
3つともそろっていれば次の段階へ進みます。アプリの仕上げの自己評価でも、この3つの観点を使っています。
戻ってよいとき
区切りを外したとたんに読みが崩れることは、珍しくありません。次のようなときは、ためらわず一つ前の段階に戻してください。
- 声には出せているが、内容が頭に入ってこない
- 同じ文で何度も止まり、どこが主語でどこが動詞かわからなくなる
- 単語を一つずつ拾うような読み方になっている
戻るのは失敗ではありません。むしろ、区切りが外れた状態で意味を取れていないのに読み進めるほうが、まとまりを意識しない読み方を練習してしまうことになります。文章全体ではなく、崩れた文だけを戻すのも一つの方法です。
紙でやる場合の工夫
アプリを使わなくても、同じ考え方は紙の上で実践できます。
- 同じ英文を2部用意する:1部には区切りをすべて書き込み、もう1部には節の切れ目だけを書く。最後は何も書いていない原本で読む。
- 鉛筆で薄く書き、消していく:最初はすべての区切りを書き、読めるようになったら小さな区切りから消しゴムで消す。
- 色を分ける:大きな区切りは赤、小さな区切りは鉛筆、と分けておけば、「赤だけを見て読む」ことで段階2を再現できます。
アプリには、区切りの表示を選んで印刷する機能もあるので、紙で練習したい場合はそちらも使えます。
初見の英文で確かめる
同じ英文を区切りなしで読めるようになっても、それは「その英文に慣れた」結果である部分も大きいはずです。反復読みの研究では、練習した文章での伸びに比べて、初めて読む文章への広がりは小さめという結果が多く報告されています(Therrien, 2004)。
そこで、ときどき初見の英文を区切りなしで黙読し、頭の中でまとまりを作れているかを確かめるようにしています。たとえば次の文を、区切りを書き込まずに読んでみてください。
Because the bridge was closed for repairs, many drivers had to take a much longer route to the city center.橋が修理のため閉鎖されていたので、多くのドライバーは市の中心部へ、ずっと遠回りの道を通らなければならなかった
読み終えたあとで、自分が頭の中で「Because the bridge was closed for repairs」「many drivers had to take a much longer route」「to the city center」くらいのまとまりで受け取れていたかを振り返ります。初見の英文でもまとまりが自然に作れているなら、区切りあり音読で練習したことが普通の英文の読みにつながり始めているサインだと考えています。
まとめ
- 区切りあり音読の目的は、区切りがなくても頭の中でまとまりを作れるようになること。
- 「区切りあり→大きな区切りだけ→薄く→なし」と段階的に外す。ただし、この方法を直接検証した研究はまだない。
- 次に進む目安は、意味・つかえの少なさ・まとまりの3つ。崩れたら戻ってよい。
- 同じ英文だけでなく、初見の英文でもまとまりで読めるかを確かめる。
4段階の表示切り替えはアプリで試せます。区切る位置の決め方は「スラッシュリーディングとは」、仕上げの振り返り方は「音読の自己チェック」をご覧ください。
参考:Shimono, T. (2018). Reading in a Foreign Language, 30(1), 152–179. ERIC(PDF) / Kosaka, T. (2023). Reading in a Foreign Language, 35(2), 270–292. ERIC(PDF) / Therrien, W. J. (2004). Remedial and Special Education, 25(4), 252–261. 要旨